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ヒト幹細胞とは?受精卵から「髪には髪の幹細胞を」までをやさしく解説
「ヒト幹細胞」という言葉を、正しく理解していますか?
「ヒト幹細胞」という言葉を、化粧品やヘアケアの広告で目にする機会が増えました。しかし、その意味を正確に説明できる方は多くありません。ヒト幹細胞とは何か、なぜ「由来」が重視されるのか。本記事では、受精卵を頂点とした分化の仕組みから、「髪には髪の幹細胞を」という考え方の根拠までを、順を追ってやさしく解説します。幹細胞そのものへの理解は、ヘアケア製品を正しく選ぶための土台になります。
そもそも幹細胞とは何か
幹細胞(Stem Cell)とは、大きく2つの能力をあわせ持つ特殊な細胞の総称です。1つは、自分自身とまったく同じ細胞をコピーのように生み出す「自己複製能(Self-renewal)」。もう1つは、特定の役割を持った別の細胞へと変化していく「分化能(Differentiation)」です。
私たちの体は約37兆個もの細胞で構成されていますが、そのすべてのはじまりをたどると、たった1つの細胞に行き着きます。幹細胞は、この「さまざまな細胞のもと」となる存在であり、その変化できる範囲の広さによって明確な階層構造(ヒエラルキー)を形づくっています。生命が育まれていく過程とは、いわばこの幹細胞が持つ可能性が、少しずつ特定の役割へと絞り込まれていく歴史でもあるのです。
受精卵を頂点とした分化のヒエラルキー
生命の出発点は、たった1つの「受精卵(Zygote)」です。受精卵は、胎盤などを含めて1つの個体をまるごと形づくるあらゆる細胞になれる能力、すなわち「全能性(Totipotency)」を持つ唯一の細胞です。
受精卵が分裂を繰り返し、胚盤胞と呼ばれる段階に進むと、その内部の細胞は「多能性(Pluripotency)」を獲得します。これは体を構成する三胚葉(外胚葉・中胚葉・内胚葉)のあらゆる細胞になれる能力ですが、胎盤そのものにはなれない点で全能性とは区別されます。この多能性を持つ細胞を、未分化のまま体外で培養できるようにしたものがES細胞(胚性幹細胞)です。
このように、生命は受精卵という絶対的な頂点から始まり、細胞が特定の役割へと特化していく、一方向のトップダウンの過程をたどります。一度特定の役割に分かれた細胞が、自然に頂点へ戻ることは基本的にありません。この「頂点から枝分かれしていく」という構造こそが、幹細胞を理解する最初の鍵です。
iPS細胞という「万能性のシミュラクラ」
ここで興味深いのが、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の位置づけです。iPS細胞は、すでに皮膚などの特定の組織に分化を終えた細胞に対し、数種類の初期化因子(山中ファクター)を導入することで、人工的に時計の針を巻き戻し、ES細胞と同等の多能性を持たせた細胞です。
いわばiPS細胞は、自然界の胚に存在する細胞ではなく、分化の頂点にある「多能性」をテクノロジーによって再構築した、オリジナルなき模造品=「シミュラクラ」とも表現できる存在です。その究極の可能性ゆえに再生医療分野で大きな期待を集める一方、増殖の制御が難しく腫瘍化のリスクをともなうこと、培養コストが膨大であることなどから、現在のところ一般的な化粧品の原料としての応用には慎重なプロセスが求められており、研究段階のものが多いのが実情です。
体性幹細胞と「部位の専門性」の誕生
発生がさらに進み、胎児から1人の個体が形づくられる過程で、細胞はトップダウン式に各組織へと分かれていきます。このとき、それぞれの組織で日々の新陳代謝(ターンオーバー)や損傷時の修復を担うために配置されたのが「体性幹細胞(成体幹細胞)」です。
体性幹細胞は、ES細胞やiPS細胞のような万能性は持たず、自分が属する組織の系統の細胞にしか変化できない、限定的な能力を持ちます。この段階に至ってはじめて、組織ごとの明確な「部位の専門性」が生まれます。代表的なものとして、骨髄や脂肪、臍帯などに広く存在し再生医療や美容領域で最も広く使われている間葉系幹細胞(MSC)、歯の神経に由来する歯髄幹細胞、そして皮膚の表皮や毛包に存在し肌や髪のターンオーバーを担う上皮系幹細胞などが挙げられます。
このように幹細胞は、受精卵から階層を下るごとに、それぞれの組織の環境と役割に最適化され、固有の居場所(ニッチ)に定着していくのです。
細胞は「育った場所」を記憶している ― 位置記憶という考え方
ここからが、数あるヒト幹細胞のなかでも「どの由来を選ぶか」を考えるうえで重要なポイントです。
体性幹細胞は、体のどこにあっても同じ性質を持つ均一な存在ではありません。細胞は、自分が配置された組織の局所的な環境からの影響を受け、その役割に応じた遺伝子の使い方を、いわば「記憶」として保持しています。これを細胞の「位置記憶(Positional Memory)」、または部位特異性と呼びます。
たとえば線維芽細胞に関する研究では、同じ由来であっても、口の中の粘膜から採取された細胞と皮膚から採取された細胞では、分泌する成分のプロファイルが異なり、その違いが維持されることが示されています。つまり細胞は、過去に属していた環境の記憶をもとに、それぞれ固有のはたらきをするということです。
「髪には髪の幹細胞を」という考え方
この位置記憶という視点に立つと、1つの自然な考え方が見えてきます。「骨の修復には骨に由来する細胞が、皮膚には皮膚に由来する細胞が最も親和性が高い」のと同じように、毛髪と頭皮にまつわる環境を考えるうえでは、もともと毛根に存在する「ヒト毛根幹細胞」に由来する情報が、最も理にかなっているのではないか、という見方です。
ヒト毛根幹細胞は、毛髪が生み出される毛根の環境で育まれた細胞であり、毛髪・頭皮環境に特化した情報を持つとされています。世界で初めて「毛根」と「幹細胞」の名称を組み合わせてINCI(化粧品原料の国際命名)に登録された純国産の原料でもあり、その正式名称は「ヒト毛根幹細胞順化培養液」です。
なお、ここで正確に理解しておきたい点が2つあります。1つは、「幹細胞シャンプー」と呼ばれる製品に配合されているのは、生きた幹細胞そのものではなく、幹細胞を培養する過程で分泌された成分を集めた「培養液(順化培養液)」であるということ。もう1つは、化粧品に配合されるこれらの成分は、あくまで頭皮を清浄に保ち、うるおいを与える保湿・コンディショニング成分であり、発毛や治療といった効果を持つものではないということです。
ヒト幹細胞を理解したら、次は「選び方」へ
ここまで、幹細胞とは何か、受精卵を頂点としたトップダウンの分化構造、そして「髪には髪の幹細胞を」という部位特異性の考え方を解説してきました。幹細胞は受精卵という頂点から各組織へと枝分かれし、その過程で細胞は「育った場所」を記憶します。この位置記憶の視点に立てば、毛髪と頭皮の環境を考えるうえで、毛根に由来する幹細胞の情報に着目するという考え方には、一定の合理性があるといえます。
一方で、実際に市場に流通している「幹細胞シャンプー」は、植物由来・脂肪由来・毛根由来など、配合されている培養液の由来がさまざまです。それぞれにどのような違いがあり、頭皮ケアの観点からどう選べばよいのかについては、関連記事で由来ごとの比較や製品選びのチェックポイントを詳しく整理しています。本記事で幹細胞の基礎を理解したうえで、あわせてご覧いただくと、「ヒト幹細胞シャンプー」という言葉の全体像がより明確になるはずです。
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※本商品は化粧品です。医薬品・医薬部外品ではありません。
※「ヒト毛根幹細胞培養液(ヒト毛根幹細胞順化培養液)」は、頭皮に潤いを与え、環境を健やかに保つための化粧品成分(保湿・整肌成分)です。
※疾患の治療や、発毛・育毛といった効能効果を承認されたものではありません。
※本格的な悩みの改善(薄毛・抜け毛・頭皮トラブルなど)を求める場合は、医療機関での専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。


